
集中力を保って生産性を上げていくには、血糖値のコントロールが欠かせません。
血糖値の上下が激しいと人間はストレスを感じやすく、眠気や倦怠感のもとになるためです。
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血糖値の上下を抑えるといったときに"GI値"(Glycemic Index)という言葉がよく出てきますが、皆さんはご存知でしょうか。
「血糖値の上がりやすさを表す数字でしょ?」と、なんとなくは知っている方も多いかもしれません。
これも間違ってはいませんが、では、GI値の高いものと低いものをそれぞれ100g食べたとしら、どちらのほうが血糖値が上がるでしょうか?
"高GIの食品"となりそうですが、実は一概には言えません。
実は、GI値は摂取する食品の量ではなく、炭水化物の量を揃えた上で血糖値上昇の度合いを計っています。
本記事ではGI値について、その定義や間違いやすいポイントを解説していきます。
GI値という言葉を正しく知ることは、集中力を高める食事をとるためのヒントになります。
少し回り道になりますが、一度理解してしまえば一生モノの知識になりますので、ここでしっかり抑えておきましょう。
GI値の定義
糖を含む炭水化物を食べると血糖値が上がるのはイメージができると思いますが、この炭水化物の種類によって血糖値の上がり具合が違うことが1981年にカナダで報告されました。
Jenkins DJ et al. "Glycemic index of foods: a physiological basis for carbohydrate exchange" Am J Clin Nutr 34(3), 1981 Mar, pp362-6. PMID 6259925
そしてGI値とは
・各食品において炭水化物が50gになるようにして食べた場合の血糖値の上がり具合
と
・ブドウ糖などの基準となる食品を同じく炭水化物50g分を食べた場合
との、比較によって算出されます。
(ここで言う炭水化物とは体内で消化吸収できるものを指しており、食物繊維を除いた、いわゆる糖質と考えていいでしょう。)
そして比較の方法としては、下図でいうと食後2時間までの青いグラフの面積と、赤いグラフの面積とを比べる手法をとります。

GI値の罠①:食品に含まれる炭水化物の割合は考慮されず
ここで重要なのはGI値は同じだけの炭水化物量で比べた場合の数字であり、食品そのものの量ではないということです。
つまりGI値を計るときに、ブドウ糖50gと比べるのは食パン50gではありません。
食パン50gには炭水化物が約25gしか含まれていないため、正しくは食パン100gと比べる必要があります。
(厳密にはブドウ糖1g=炭水化物0.91gですが、ここでは分かりやすくするために、同じとしています)
炭水化物をほとんど含まない肉類にもGI値があり、例えば牛モモ肉は46とされています。
ただし、牛モモ肉を炭水化物が50gになるまで食べるとなると、およそ10kgは食べないといけないことになります。
(牛モモ肉は100gあたり炭水化物量0.5gとする)
これは不可能と言えますので、食品の重さに対して炭水化物の量が少ない食品に関しては、GI値だけを見ても判断がつかないのが分かるかと思います。
なお、主要な食品のGI値は以下のようになっており、54以下を低GI、55〜69を中GI、70以上を高GIとしています。

GI値の罠②:低GIならたくさん食べても良いわけではない
たとえば玄米のGI値は55、白米は92なので、玄米ならたくさん食べでも血糖値が上がりづらい、と考えるのは早計です。
玄米も白米も含まれている炭水化物の量はほとんど同じなので、食事の量が変わらないのであれば確かに血糖値の上昇は玄米の方が穏やかでしょう。
ただ、白米100gに対して玄米200gを食べたとしたら、いくら玄米のほうがGI値が低くとも、血糖値は玄米の方が上がってしまいます。
なぜならGI値は炭水化物の量を揃えたときの指標ですので、炭水化物が増えてしまえばGI値以上に血糖値が上がることになります。
GL値の方が実態には近い
GI値は食品の量ではなく、そこに含まれる炭水化物の量を揃えて比べていたことが分かりました。
たとえばスイカのGI値は60と中GIとされますが、スイカはほとんどが水分であるため、100g食べても炭水化物は10g程度しか含まれません。
そのため一切れ食べたくらいでは、GI値60ほどの血糖値の上がり方はしないことが分かります。
このようにGI値という数字が印象づけるイメージと実態は、食品によって大きく異なっています。
そのズレをなくすために考案されたのがGL値(Glycemic Load=グリセミック負荷)です。
GL値とは《100g中の炭水化物の量(g)×GI値÷100》で求めることができます。
計算式を見ると分かりづらいかもしれませんが、食品の量に対してどのくらい炭水化物がつまっているのかを加味した指標です。
たとえばスイカなら、
・100gあたりの糖質は10g
・GI値は60
ですので、GL値は10g×60÷100=6となります。
GL値は10までは低GL、11~19は中GL、20以上は高GLとされるため、スイカは低GLに分類されます。
ちなみに白米のGL値は29、玄米は19となるので、やはり白米は血糖値を上げやすく、それに比べて玄米は上がりづらいのは間違いなさそうだと、GL値を見てあらためて分かりますね。
おわりに
低GIだからといってその食品に固執したり、高GIを徹底的に避けていたとしても、実はGI値の罠にかかっているかもしれません。
血糖値を意識した食事をとる際はGI値だけに気を取られず、GL値も意識することで、より実態に即した選択ができるようにしましょう。